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「言語通級指導教室」を詳しく説明

言語通級指導教室とは?

小学校や中学校の通常の学級に在籍しながら、言語に関する特定の困難さを持つ子どもたちが、個別の指導を受けるための特別な教育形態です。「ことばの教室」とも呼ばれます。

1. 目的と位置づけ
* 目的: 障害による学習上または生活上の困難を克服するための教育を行う。具体的には、言語発達の促進、コミュニケーション能力の向上、自己表現力の育成などを目指しています。

* 位置づけ: 学校教育法第81条第1項および学校教育法施行規則第140条、第141条に基づき行われる特別支援教育の一つです。通常の学級に在籍したまま、一部の時間を個別または少人数のグループで指導を受けます。

2. 対象となる子ども
言語通級指導教室の主な対象は、以下のような言語に関する困難さを持つ児童生徒です。
* 構音障害: 特定の音が正しく発音できない(例:「さかな」を「たかな」と発音する、「ち」が「き」に聞こえるなど)。

* 吃音(きつおん): 話し言葉のリズムが乱れる(言葉がどもる、引き伸ばす、反復するなど)。

* 言語発達遅滞: 年齢相応の言葉の理解や表現に遅れがある。語彙が少ない、文の組み立てが苦手など。

* 選択性緘黙: 特定の場面で話せない。

* 難聴に伴う言語障害: 補聴器などを使用しても聞き取りが困難な場合、発音の不明瞭さなど。

* その他: 発達障害(自閉症スペクトラム障害、ADHDなど)に伴うコミュニケーションの困難さを持つ児童生徒も対象となる場合がある。

ただし、通常の学級での学習におおむね参加でき、一部特別な指導を必要とする程度の児童生徒が対象となります。知的障害(知的発達症)がある場合は、基本的に通級指導教室の対象外ですが、研究が進められています。

3. 指導内容
言語通級指導教室では、子ども一人ひとりの困りごとに合わせたオーダーメイドの指導が行われます。
決まった教科書や教材はなく、子どもの特性や「こうしたい」という願いを理解し、それに合った指導目標を立て、学びやすいように教材や教具を工夫しながら指導を進めます。

具体的な指導内容は多岐にわたりますが、例としては以下のようなものがあります。
* 聞き取る力、話す力を高める指導:
* イヤートレーニング(正しい音を聞き分ける訓練)
* 口の体操(舌や唇など構音器官の機能訓練)
* 発音練習(構音指導)

* 使える言葉を豊かにし、表現力を高める指導:
* 語彙を増やす学習
* 文の組み立て方、話し方の練習
* 会話や発表の練習

* 言語発達を促し、教科学習の基礎を育てる指導:
* 国語や算数などの教科学習でつまずきの原因となっている言語的な課題への支援(文章の理解、抽象概念の形成など)

* 心身の緊張をほぐし、のびのびと自己表現ができるようにする指導:
* 話すことへの自信を育むための働きかけ
* 達成感を味わわせ、自己肯定感を高める指導

* コミュニケーション能力の向上:
* 人間関係の形成、自分の意思を伝える練習
指導は個別指導が原則ですが、必要に応じてグループ指導も組み合わせられます。

4. 通級の形態と期間
* 通級形態: 児童生徒は普段、在籍している学校の通常の学級で学習し、週に数回、決められた時間に言語通級指導教室に通います。在籍校内に教室がない場合は、他校に設置された教室に通う「他校通級」の形もある。

* 指導時間: 小・中学校では年間35単位時間から280単位時間以内が標準とされる。学習時間は小学校45分、中学校50分を1単位です。

* 通級期間: お子さんの実態に応じて異なり、目安は6ヶ月から2〜3年程度とされる。

5. 通級までの流れと連携
* 相談: 保護者や学校の先生が、子どもの言語に関する困難さについて相談。

* 就学相談: 就学前のお子さんは、市町村の教育委員会やこども支援センターなどに就学相談を申し込みます。在籍中の児童は、在籍校に相談。

* 審査・判断: 面接、知能検査、行動観察、専門医による診断などを基に、教育学、医学、心理学等の観点から総合的に判断する。

* 通級の決定と計画: 通級が適当と認められた場合、個別の教育支援計画が立てられ、それに沿って指導が行われます。
言語通級指導教室の担当教師は、通常の学級担任や保護者、関係機関と密に連携し、情報共有を図りながら指導を進める。

6. 成果と課題
言語通級指導教室は、言語に関する困難を持つ子どもたちの学習面や生活面の改善に大きな成果を上げています。自己肯定感の向上や、コミュニケーション能力の改善、教科学習のつまずきの克服などが挙げらる。

一方で、以下のような課題も指摘されています。
* 設置状況の地域差: 言語通級指導教室の設置状況は地域によって異なり、通いたくても通えないケースがある。

* 在籍校との連携: 通級指導と通常の学級での指導の連携をいかに密にするかが重要です。

* 担任教師の理解: 通常の学級担任が、通級指導を受けている児童生徒の特性や支援内容について理解を深める必要がある。

* 担当教員の専門性: 言語に関する専門的な知識と指導技術を持つ教員の育成・確保が重要。

言語通級指導教室は、子どもたちが自信を持って学校生活を送り、社会で活躍するための重要な支援の場となっています。

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