1|なぜ 「個別の支援・指導計画書」が鍵なのか
合意形成の土台:保護者・担任・通級担当が「何を、どこまで、いつまでに」を同じ目線で共有できる。
実行管理の要:計画→実行→振り返り→改善のループを回す“軸”になる。
引継ぎの生命線:学年・学校・担当が変わっても“支援の続き”から始められる。
2|「個別の支援・指導計画書」に必須項目
具体的:状況・条件・行動が誰でも再現できる書き方にする。
簡潔:読む人が要点を掴める分量に抑える。
即時:授業直後など“鮮度”の高いタイミングで更新する。
観察可能:事実(見えた/聞こえた)と解釈を分けて記述する。
安全:個人情報・同意・保管のルールを守る。
3|日々の運用を支える記録
できたこと:例「音読は1段落を自分で開始、詰まっても止まらず言い換えができた」
支えになった手立て:例「指示は3ステップで提示、行を追う下敷きを使用」
次に試すこと:例「段落番号を先に確認→音読役割を決めてから開始」
※主語は“本人の行動”。形容詞より数字と動作を。
4|観察メモ
〈場面〉:いつ/どこで/誰と/何の活動中か
〈条件〉:指示の出し方、道具、座席、時間、課題難度
〈行動〉:開始までの時間、取り組み時間、回数、自己申告やヘルプ要請
〈結果〉:正答率・完成度・終え方、周囲への影響
〈振り返り〉:うまくいった手立て/逆効果だった手立て
〈次の一歩〉:翌週に試す具体策(担当・場面・時間)
迷ったら ABC(先行条件→行動→結果) で書けば原因と手立てが整理しやすくなります。
5|“目標”は式で書く
【条件】+【行動】+【基準】+【期限】
例)「【国語の音読3分】において、【自分で開始し、言い換えを用いて読み切る】を【週3回中2回、支援1で】、【2か月以内】に達成する。」
支援の目安(例):0=自立/1=口頭合図/2=視覚支援やプロンプト/3=手添え
基準の作り方:回数(頻度)/時間(持続)/質(正確さ)/範囲(量)のいずれかで数値化。
6|載せる“根拠”の集め方
数値で示す(定量)
正答率、課題完了率、開始までの時間、行動の頻度・持続・強度
ヘルプ要請回数・自己申告回数、遅刻・離席・中断の回数
付き添い時間、支援度スコアの推移
7|運用サイクル
学期末:目標ごとの達成判定、効果の高かった手立てTOP3、次学期の目標追記。
8|家庭と学校をつなぐ「3行日誌」
困り場面:「宿題の計算で桁上がりを忘れる」
手立て:「最初の2題は一緒に、あとはタイマー3分で区切り」
結果・本人コメント:「できた/疲れた/明日はこうする」
学校と家庭で書式を合わせると、実行力が上がります。
9|“やりがちNG”
感想だけで事実が無い(「よく頑張った」→何を、どれくらい?)
成果だけで条件が無い(どんな支援・場面でできたか不明)
場面が特定できない(いつ・どこ・何の時間?)
取りすぎ・盛り込みすぎ(読む人の時間を奪う)
個人情報への配慮不足(顔が特定できる写真の無断共有など)
10|まとめ
“支援”は偶然では続きません。具体・簡潔・即時・観察可能・安全を日常運用し、数値化と見直しで成果を積み上げましょう。
次回 通級シリーズ DAY 9|“教室から社会へ”—「個別の支援・指導計画書」が進学・就労へ“強みと配慮”を運ぶ。