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通級指導教室の課題 ⑩保護者と本人の“自己受容”—支援が長く続くための土台

10回のシリーズにして「通級指導教室」を取り上げました。

通級の成否は、指導計画や時間割だけで決まりません。本人が自分の特性を「扱えるもの」として受け止める力、そして保護者が“わが子の発達”を信じ続ける力が、支援の持続を左右します。

最終回は、教室から社会へつながるための*自己受容*を、家庭・学校で実践できる内容にします。

1|自己受容とは何か(自己肯定感との違い)
自己肯定感=“うまくいった自分”を評価する感情。
自己受容=“うまくいかない自分を含めた全体”を扱う姿勢。
通級では、成功体験を積む一方で「抜ける」「違う」を日常的に経験します。できない瞬間も自分の一部として扱えるかが、成長につながります。

2|通級ならではの“自己像の揺れ”
クラスを離れることで「特別扱い」と見られないか不安。
支援がある場ではできるのに、教室で再現できず落ち込む。
進学・実習など新しい環境で、支援の伝え方に迷う。
→ だからこそ、**言語化された「自分の取り扱い説明書」**が必要です。

3|本人の自己受容を育てる
“できた”を行動で言い切る
例:「自分で開始できた/言い換えて最後まで読めた」。形容詞より動作+回数で。
失敗の言い換え
「できなかった」→「今の条件では難しかった」。条件を変えれば挑戦は続けられる、と伝える。
SOSの言い方をセットで練習
例:「見通しをください」「もう一度ゆっくりお願いします」「5分休むと戻れます」。
支援度の自己申告
0=自立/1=合図/2=視覚支援/3=手添え。今は何番ならいける? を自分で選ぶ。

4|保護者の自己受容を支える視点
比較から“固有の発達線”へ:同級生基準ではなく、昨日の本人比で見る。
役割の再定義:先回りして“全部助ける人”から、仕組みを一緒に作る人へ。
境界線の合意:家庭学習・睡眠・画面時間など、守るラインを家族会議で明文化。
言葉の選び方:“なんでできないの?”ではなく、“何があればできる?” と問う。

5|家庭と学校で使える“ことばの型”
承認:「今日は最初の一歩が早かったね」
条件化:「席を変えたら集中が続いたね。次も同じ条件でやろう」
選択:「0〜3のうち、いま必要な支援はどれ?」
切替:「難しいね。5分休んで再開しよう」
予告:「次はここで困るかも。合図はどうする?」

7|やりがちな落とし穴
ラベリングの固定化:「ASDだから無理」など決めつける言葉。
努力論の押し付け:「頑張ればできる」は支援計画を消す。
過剰保護と放任の往復:境界線が曖昧だと、どちらにも揺れやすい。
→ 条件で語る・仕組みで支えるを徹底する。

まとめ
自己受容は“気持ちの持ちよう”ではなく、言葉・仕組み・記録で育てるスキルです。
通級で得た成功パターンを、在籍学級、そして将来の進学・就労へ運ぶために—本人と保護者の自己受容を支援の土台として整えましょう。

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