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通級指導教室の課題 ③指導内容―“自立活動”だけで足りる?

1 そもそも「自立活動」とは

通級指導教室で核となる学習領域。
文部科学省は、6区分27項目(健康の保持/心理的安定/人間関係形成/環境把握/身体の動き/コミュニケーション)に整理し、個々の児童生徒のニーズに合わせて選択・指導するよう示しています。

2 現場で起きている“補習化”

読解・計算・宿題フォローといった教科の穴埋めが時間を占有し、本来の自立活動が後回しになるケースが各地で指摘されています。2025年7月の報道でも「教科指導はしない」と事前に伝えた結果、心理的安定だけで終わり学習保障につながらないという声が紹介されました。
朝日新聞

3 補習を入り口にするメリットと落とし穴

・支援への抵抗感の緩和
「勉強を手伝ってもらう」という理由は子どもにとって通級のハードルを下げる。
・困りごとの可視化
補習を通じて「板書が写せない」「作業記憶が弱い」など特性が浮き彫りになる。
・成功体験の提供
本人に合った補習は自己肯定感を高め、自己受容の土台をつくる。
・指導者の観察機会
教員が学習面のつまずきから行動特性まで俯瞰できる。

→ ただし補習で時間を使い切ると 自立活動が形骸化 する点が最大のリスク。

4 バランスを取るには

アセスメントを徹底する
教科のつまずきが読字・注意転導・作業記憶など、どの特性由来かを把握することが最優先。
国立特別支援教育総合研究所の調査でも「学習上・生活上の困難の把握」は 90.6 % の学校が重要と回答しています。

IIP(個別の指導計画)に“両輪”を落とし込む
自立活動の目標と、必要最低限の教科学習支援をセットで設定し、時間配分を事前に明示。
「通級開始時に 「個別の指導計画書」 を作成し、状況に応じ柔軟に見直す」ことが手引でも求められています。

通常学級との連携を仕組みにする
週ごとに担任へフィードバックし、通級で得たスキルを教室で活かす循環をつくる。実践ガイドも「担任と通級担当の定期的な情報共有」を必須事項として挙げています。

自立活動は通級の「心臓部」。
しかし補習ニーズを無視すると現場は回りません。
自立活動と教科学習支援を車の両輪として設計し、「個別の指導計画書」 が補習化リスクを防ぎ、学習保障と特性支援の両立につながります。

次回 DAY 4 では「指導体制と専門性―教員1人あたり児童生徒数の地域差」。

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